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スペイン・サンチャゴ巡礼の旅 NO6

 <誰でも歩ける>

 ところで、カミーノは、その人の脚力に合わせれば、誰でもが歩けるところである。スペインの人達は何回かに区切って行く人が多いようだ。歩くのも、1日平均20km。これだと、朝7時のスタートで午後1時か、2時には次の宿泊地に着く(私は日程が限られていたので、朝5時半スタートで40kmを歩いたりしたが、午後はめまいがしそうな位に暑くて、体力を消耗した)。

 また、見どころが多いブルゴスやレオンでは2泊し、のんびり休養することも考えられるし、歩きたいところだけを歩くことにして、あとは鉄道やバス、タクシーを利用するというやり方もある。

 それと、暑い季節は避け、5月や9月に行くという手もある-その季節に行くスペイン人は多いとか-。

 道は広くてゆるやか。歩きやすいので視覚障害者にも十分楽しめよう。注意するのは、ときどきある国道歩きである。歩道がないので、体のそばすれすれを大型トラックが風を切って通過する。

 また、治安はよい。旅行者にとって、パリやローマと比べると、スペインの首都・マドリッドはヨーロッパで最も危険が多いところであり、昼間の繁華街でも強盗殺人事件があると聞いたが、北部に位置するこの巡礼路の治安は比較的よいと感じた。

 持ち物が盗られそうな危険は感じなかったし、歩いている誰からも物を盗られたという話は聞かなかった。もちろん、パスポートやお金といった貴重品については、肌身を離さない等の注意が必要だが。私はアルベルゲのシャワー室にも、この二つは持ち込んだ。

 経費は飛行機代(成田-マドッリド間往復は、夏で15-20万円、春秋なら10万円以下)のほかは、切り詰めればかなり安く行ける。私は25泊はアルベルゲ泊り(1泊500円前後)だった。

 食事は毎食、コンビニで買ったもの(水、パン、ハム、シーフードの缶詰、バナナ、リンゴ、モモなど)を食べていれば、安あがり。夕食はアルベルゲのキッチンで自炊をすればよい。

 外食の場合は、バルでボカディージョ(フランスパンにハムなどをはさんだもの)とコーヒーの朝食をとれば、3-4ユーロ。クロワッサンとコーヒーなら、1-2ユーロ。コーヒーだけなら、0.5-1ユーロである。

 夕食は、レストランの巡礼者用定食が7ユーロ前後-、大盛のサラダ(またはスープ)と肉料理にパンとワインが付く。私が常食とした、大盛のサラダに目玉焼きとポテトフライは、ミネラルウォーターと紅茶が付いて、7-9ユーロである(やや高級なレストランでは、スープもつけて15ユーロ)。

 国内を移動する場合は、バスを使うときわめて安い。サンチャゴ-フィニステレ間は2時間半乗って10ユーロだった。マドリッド-サンチャゴ間のバス代が9時間で30ユーロ。なお、同区間の鉄道特急(「タルゴ」という)は1等47ユーロ、2等36ユーロである。

<おすすめのまち、おすすめのコース>

 この道は大きく分ければ、
①標高1000mから1500mの三つの峠越え、
②乾燥した内陸部・レオン周辺の、木陰がなく、延々と続く麦畑の道、③大西洋に近く、雨が多く緑が多いガリシア地方の森の中を行く道の三つに分けられる。

 おすすめのコースはいろいろある。その人の好みにもよるが、私は、三つの峠越え(ピレネー、イラゴ山、セブレイロ峠)、牛の糞の臭いがする中世の村を次々に通りすぎるサリア-ポルトマリンのコース、ポルトマリン以降の森の中を行くコースなどを推薦する。

 逆にレオンをはさんでの数日間は私には単調すぎた。そこは広い、広い麦畑。木が1本もなく日陰がないところを、はるかかなたに霞む地平線を見ながら、ひたすら歩くというコースが多かった(これが最高だという人もいたが)。

 それから、バスで行ったフィニステレ(フィステラ)は他を割愛してでも行くとよい、最高におすすめの場所である。ここは大西洋岸のスペイン西端のまち。到着手前の隣り町の、数kmはありそうな真白な砂浜と浅瀬が続く緑の海には、スペインの茶色い屋根と白壁の建物がピッタリ。

 ついで岬の先端から望む大西洋の荒波。また、まちの西側のビーチ(広大な砂浜。巡礼者は「ビーチ」と呼ぶ)では、大西洋に沈む夕日が見られる。ただし、好天に恵まれることが条件ではあるが。

 私は夕方の9時過ぎに夕日を見に行った。港から15分のところ。砂丘の上から眺めると、1kmはありそうな広い浜辺に点々と黒い人影があった。腰をおろして夕日をじっと眺める人、なぎさを歩く人。巡礼を終えた数人の若者である。はるかかなたはアメリカ。夕日が沈み、寒くなったが、どうしても、海に手を触れたくなり、私も砂浜に下り、なぎさまで歩いていった。思い出のひとコマである。

 また、中世の雰囲気を残すまちや村も、巡礼の道に彩りを添えて、なかなかよい。古城がある赤土の丘、その麓に広がるカストロヘリスのまち、湖畔にある、景色のよいポルトマリンのまち、2階建てや3階建ての家々が狭い石畳の道をはさんで壁のように連なり、中世の雰囲気が特に濃厚なプエンテ・ラ・レイナやロス・アルコス、ナヘラといったまちまち。

 私はそれらのまちのアルベルゲを宿とし、路地裏を散策し、中世に建てられた薄暗い石造りの教会を訪れては、照明で美しく輝くマリア様を仰ぎ見た。

 更に、歩いていく途中では、いくつもの小さな村を通る。教会の尖塔や鐘楼が必ず中央にそびえ、麦畑のはるかかなたからでも、村があることが分かる。
村に入ると、崩れかかった石積みの農家があり、牛糞の臭いがただよう。牛や羊の群れが道一杯に広がって行く手をさえぎることも。犬や鶏は放し飼い。道端には大きな犬が寝転び、やさしい目で巡礼者を迎える。ときには、吠えかかる犬もいるが、杖を持っているので、安心。

 道端では、農家のおばあちゃんが砂糖をまぶした薄いトルティーヤを売っている。カメラを向けると、歳をとった姿を写されるのは絶対にいやだと拒否された。更に行くと、農家の庭先でブルーベリーと野いちごの無人販売を見つけた。1パック、1ユーロ。

 これらのほか、もちろん、大聖堂(カテドラル)がある大都市のブルゴスやレオンの景観、目的地サンチャゴの聖都としての雰囲気なども見逃せない。これらは観光案内に詳しい。

 なお、巡礼路沿いにある数多くの教会のほとんどはロマネスク様式と言われ、旅の見どころの一つであるが、私には充分に鑑賞する余裕がなく、サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(ブルゴスから巡礼路をはずれた60kmの山中にあり、回廊は世界一美しいと言われる)にも寄らなかった。

注)ロマネスク様式とは、11-12世紀に西ヨーロッパの全域で流行した建築様式である。壁は石積みで分厚く、窓は小さく、天井は半円形。全体に重厚な感じがするが、内部はうす暗い。なお、「ロマネスク式」(ローマ風)と名付けられたのは19世紀に入ってから。

 また、大聖堂(カテドラル)とは、司教が在任している格式の高い教会のことで、司教区内(大きなものは日本の県ほどの広さあり)にある一般の教会を統括する。

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