「ル・ビュイの道」をめざして

2回目のサンティアゴ巡礼-フランス「ル・ビュイの道」をめざして

<2回目のサンティアゴ巡礼-フランス「ル・ビュイの道」をめざして>

注)2009年6月21日-7月20日、この道を歩いた。「サンティアゴ巡礼・フランス編(ル・ピュイの道) 」 http://takesitamura.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-22f5.html に報告を掲載したので、参照されたい。

  (行こうと思う・2008年9月
 精神的にちょっと疲れて、毎日の生き方に積極性が失われてきた。六つ星山の会(視覚障害者と共に山に登る会)の事務局を担当して10数年、事務と1-2週間おきのサポート登山を延々と続けてきたが、最近は日程が混み合い休む暇がなかったこと、視覚障害者登山で4泊5日の南アルプス縦走にサポートとして参加したときに「自分が登るのがやっと。サポートどころではない」と脚力の衰えを痛感したこと、山の会でいろいろと人間関係の葛藤があり悩まされてきたことなどが原因と思われる。

 これではいけない。前向きに生きる気持を持たなければ。それには夢を持つことだ。
 夢。それはヨーロッパに行っての長期間のウオーキング。これまで何となくあこがれてきたが、その実現に一歩踏み出してみよう。

 それは、フランス国内をル・ビュイからサン・ジャン・ピエド・ポーまで歩くこと。映画「サン・ジャックへの道」(フランス映画・日本で公開済)に登場するサンチャゴ巡礼路の一部である。そこに行こうと思うと、ワクワクしてくる。

 マッキンリー登山や前回のサンチャゴ巡礼に行くと決めたときも、行くまでの数ヶ月間、そんなワクワク感を味わいながら毎日を過ごした。人生では最高の瞬間がいくつかあるが、その一つが大きな夢への挑戦である。もう一度、そんな夢に挑戦してみたい。

 まずは行く仲間。フランス国内はスペインほどに道や宿泊施設が整備されていない。道が分からなくなったり、宿が見つからないということもあるだろう。そんなときに相談しながら一緒に歩ける、気心の知れた仲間がいたら、とても心強いのだが。

 2008年9月のある日、友人のmzさんに会ったとき、「来年の夏頃、一緒に行かないか」と誘ってみた。彼は200kmマラソンなどもやっており、一緒に行ければたいへん心強い。春の聖岳に連れて行ってもらい、吉野-熊野奥駆山行ではテントを持ってもらった。気心が知れている。しかも、英会話が私よりはるかに上手だ。「あまり長い期間でなければ」OKとのこと。まずは、ハードルを一つクリア。

 次は体力の問題。前回64歳でスペイン国内のサンチャゴ巡礼路を歩いたときとは異なり、体力が落ちている。最近は2歳と4歳の孫の相手で忙しく、ジョギングや水泳をほとんどやらなくなった。そのせいか、胃の調子もよくない。こんな状態では前回のように毎日歩き続けることはできないだろう。体力と脚力の回復が必要だ。

 とりあえず、4日ほど朝夕5kmのジョギングを欠かさずに続けてみた。急にやったので、ももが痛い。また、妻と銀座を散歩したあと、一人で銀座から北千住まで隅田川沿いを1回も休まずに歩いてみた。3時間15分のウオーキングである。次は市内のプールで水泳を1500m。視覚障害者登山の関係では奥多摩・青梅のハイキングコースや山中湖畔・三国山へ。

 これからはこんな形で、視覚障害者登山のほかに、ジョギングと水泳、それに一回5-8時間のウオーキングを組み合わせて、巡礼路を歩き続けられるだけの力を付けていきたいと思う。

道と宿を調べる
 行くとなれば、まだまだいろいろと心配がある。スペイン国内では「道しるべ」がはっきりしており、道に迷うことはまずなかった。5-10kおきに無料の宿泊施設も完備していた。フランス国内ではどうだろう。

 道が分かるだろうか、安い宿はあるだろうか、食事は手に入るのか、どの程度の数の巡礼者が歩いているのだろうか。
これらを知るために、まず、フランス国内の巡礼記録が載っている「銀河を辿る-サンティアゴ・デ・コンポステラへの道」(新評論・329頁・3200円・清水芳子著)という本を読んでみた。日本語で書いた徒歩の巡礼記録については、スペイン国内の旅行記は5-6冊あるのだが、フランス国内のものはほとんどない。

 この本は「サン・ジャックへの道」を見に行った映画館でたまたま見つけて手に入れたものである。
フランス国内の巡礼路には北から、パリを出発点とする道、ヴェズレーからの道、ル・ビュイからの道(以上3本はサン・ジャン・ピエド・ポーに通じる)、サン・ジルの道の4本があるが、この本はル・ビュイの道を行く徒歩の旅行記(750km・37日間。自分の場合、もっと日数の短縮が可能と思われるが)である。
   
 これを読んで「GR65」を知った。「GR」はフランス国内に張り巡らされた自然歩道であり、「65号」はル・ビュイからサン・ジャン・ピエド・ポーに至るサンチャゴ巡礼路である。これをたどってみようかと思う。
9月12日に都心の「八重洲ブックセンター」に行き、「GR65」が載っているル・ビュイ周辺の地図MICHELIN・No522 Region・1600円・縦横とも1m50cmほどのもの。裏面あり。フランス国内を17区分した詳細図を買った。
 
 家に帰ってじっくりと眺めると、ル・ビュイから「GR65」と横や上に記された点線が切れ切れに西南に伸びていた。これだ。赤インクで印を付けながらたどるが、地図が途中までしかない。数日後、もう一度、店に行きNo524No525も買い求め、その「GR65」にも赤線を付けた。

 ほとんどが国道や県道などの車道沿いにあり、道が分からない場合は、車道を歩けば次の目的地に着けるようだ。ただし、標高1000m前後のオーブラックの荒野越えは別のようだが。ともかく、これでサン・ジャン・ピエド・ポーまでの道は大まかに分かる。

 次はインターネット。ヤフーで「サンチャゴ巡礼 ル・ビュイ」と入力し検索すると7件がヒットしたが、徒歩の旅行記はみつからなかった。次いで「GR65」で検索すると8万件がヒット。冒頭にル・ビュイの道を行く日本人の徒歩旅行記が4件見つかった。
1)「Camino GR65-2006年夏のGR巡礼の記録」
  http://takahiroh1.cocolog-nifty.com/

TAKA(タカヒロ)さんの一人旅。7月12日福岡発、7月13日パリ経由、列車でル・ビュイへ。14日、市内観光、15日スタート。8月15日サン・ジャン・ピエド・ポー着。32日間を要す。
2)「Spiritual Path to Santiago de Compostela」                        http://hanguro.cocolog-nifty.com/james/gr65/index.html
2007年5月26日-6月30日の一人旅。

3)2003年夏「ヨーロッパ巡礼の道」1495km徒歩旅行 http://www.ne.jp/asahi/hoji/hoji/pilgrim/

  ご夫婦と友人の3人旅。奥さんは途中で帰国。2007年5月21日成田発、パリ1泊、リヨン2泊、ル・ビュイ1泊。5月26日スタート、6月29日サン・ジャン・ピエド・ポー着。期間35日間。2006年にサン・ジャン・ピエド・ポーからサンチャゴ・デ・コンポステーラまで歩いたことあり。
4)スパ&スパエッセイ‐kikiさんからhttp://www.geocities.jp/camino4321/camino/jyunreiki/mrs_kiki/essay_8_2.html
  11歳の娘さんと主婦の二人旅である。カナダ在住。ル・ビュイ1泊後、7月2日スタート。ときどきトランスバガージュ(タクシーに似たもの)を利用。7月30日サン・ジャン・ピエド・ポー着。

 これらを読んで、留意点をメモしてみよう。
 宿については、上記4件の記事により、1泊10フラン前後の「ジット(Gite d’etape)」というハイキング用の宿泊施設が全国的に、もちろん「GR65」沿いにも点在しており、巡礼者はそれを利用していることを知った。また、詳しい巡礼路の地図はル・ビュイで手に入るという。
 さあ、まずは体力と脚力の回復だ。

日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会の講演会に出席
 サンティアゴ巡礼についての写真展や講演会の情報を得ると必ず見に行く。「ル・ビュイの道」の情報を得たいということもあるが、自分が行ったときを回想し、あのときの毎日の高ぶった気持をよみがえらせ、ちょっとの間だけでも浸りたいという思いもある。

 昨年だったか、「世界遺産巡礼の道を行く・南川三治郎写真展」を東京ミッドタウンにあるフジフイルム・スクエアに見に行った。

 今回は、「相田みつを美術館」で開かれている「祈りの道-サンティアゴ巡礼の道と熊野古道・ルイス・オスカニャ&六田知弘写真展」を見に行って、下記の講演会があることを知り、早速申し込んだ。
・講演会:祈りの道講座「サンティアゴ巡礼」
・主催:日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会(http://www.camino-de-santiago.jp/
・日程:2009年1月24日(土)15:00-16:30
・場所:相田みつを美術館(有楽町・国際東京フォーラム地下)
・定員:40名
 
 会場はほぼ定員一杯。写真を壁に写して、スペイン国内の巡礼路の説明が約1時間あった。講師は友の会代表の森岡朋子さん。それと、質問に答えるために、巡礼を経験した友の会の会員の方も数名参加しており、自転車で行きたいという若者の質問などに答えていた。

 私はフランス国内の巡礼路の地図の入手方法について質問。そこを歩いた若い男性からインターネット上の書籍購入システム「アマゾン」で買えると教えていただいた。

 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会は2008年6月に設立された。巡礼に行く人に情報を提供し、相談に乗る会である。日を決めての相談会や懇親会もある。友の会はすでに世界15ケ国以上にあるというが、行きたい人にとって、このような会があるとたいへん心強い。早速、会員になった(年会費3000円)。

映画Within The Way Without 内なる道を求めて-サンティアゴ巡礼の旅を見る

2009年3月14日(日)14時-16時30分、「相田みつを美術館」に映画を見に行った。
定員40名。13時から整理券を配ったが、20分で満員。私は36番だった。
監督:Laurence Boulting。
出演:黛まどか(春に旅する)、ミレナ(ブラジル人。夏に旅する)、ロブ(オランダ人。冬に旅する)。
黛まどか:俳人。1999年5月-7月にこの巡礼路を歩き、『星の巡礼-スペイン「奥の細道」-』を著す。巡礼路で上記監督に会い、出演の依頼を受けて、再度、スペインに渡り、この映画に出演した。今回の映画会に出席し、20分間のあいさつをされた。
内容:旅の様子を追いながら、3人の旅人の心の動きを言葉で表現したもの(それらの言葉の日本語訳が次々に画面に流れ、すべてを理解するだけの時間がなかったのは残念)。
DVDの発売:外国では発売されているが、日本語訳のついたものはまだ発売されていない。
感想:巡礼をすることの意味を考えるのにたいへん有用。私の場合は「歩くこと」「歩き通すこと」、そのことだけが目的だった。今振り返ってみると、私の人生の中で、最も素晴らしい思い出の一つとなっている。思い出すと、今でも、やりとげた満足感で心が充実する。

 (クレデンシャル(巡礼手帳)の発行を依頼日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会が会員向けに発行を予定している「クレデンシャル」を頼んだ。作成料1000円。プラス寄付。「東京カテドラル」のスタンプを押してもらえる。

サンティアゴ巡礼に行く人のための相談会に出席

・2009年4月11日(土)13:00-16:30、代々木八幡区民会館にて。
・主催は日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会。
少しワクワクしながら参加。何となく心が浮き立つひとときである。参加者は12人位。別に相談を受ける方が理事長の森岡朋子さんを含めて6人ほど。
 スペインを歩くことを目的とする人がほとんどだったが、私を含めて2人がフランスのル・ピュイの道についての相談だった。実際にそこを歩いた方が2人来て、1対1で相談に乗ってくれた。
 私の相談相手は伊豫谷さん。数年前の学生のときにル・ピュイ-サンティアゴ間とヴェズレー-サンティアゴ間を歩いたという青年である。道のこと、食料のこと、電話のかけ方、宿のこと、電子辞書のことなどを聞いたが、特に知りたかったのは「道は分かりやすいか」ということである。大きな収穫があった。それは、300頁に及ぶ詳細なフランス語の案内書を見せてくれたことである。使い込んで表紙が取れかかっていたが、旅の間の出来事がメモされており、彼にとっては思い出が詰まった大切な品のようだった。
「Maim Maim Dodo・Le Chemin de Saint Jacques de Compostelle・
Le Puy-en-Velay / Saint-Jean-Pied-de-Port・GR65」。
これがその本。連続して150枚の地図が載っており、地図ごとにジットや民宿、ホテル、キャンプ場、レストラン、カフェ、インフォメーションなどの所在地が記してあった。
これさえあれば道に迷うことはない。どこで昼食を食べるか、どこで泊まるかの計画も立てられる。ル・ピュイで購入できるとのことだったが、念のために、全頁のコピーをとらせてもらった。2千円を両替して30分ほど、時間を気にしながら夢中でコピー。あっという間に3時間30分が過ぎ、伊豫谷さんに厚くお礼を言い、森岡さんにあいさつをし、4月末に奥さんとこの道を歩くという望月さんに「成功を祈ります」と言って、会場をあとにした。
帰りは土曜日で賑わう代々木公園を通って原宿まで歩き、喫茶店でひとときを過ごす。

日本で初めて行われた「巡礼者送り出しの祝福」のミサに出席
 下記日程で、サンティアゴ巡礼に行く人のための祝福のミサが行われた。
・2009年4月29日(水・祭日)16時より。
・東京カテドラル・聖マリア大聖堂にて。
・主催は日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会。友の会理事チェレスティーノ神父が出席。
 日本では初めてのこと。見てみたい、経験してみたいという興味本位の気持から、また、巡礼の無事を祈りたいという思いもあって出席した。
 東京カテドラルは「椿山荘」の正面入口の向かい側にある。前面に高さ62mのオベリスク風の鐘楼がそびえ、大きくて、立派な教会だった。

注)日本のカトリック教会の管轄区域は16の教区に分かれ、それぞれに司教または大司教がいて教区の母教会としての役割を果しているが、東京教区は東京カテドラルがその地位にある。なお、(大)司教が、自分の教区内にいる信徒を教え、導き、司式するための「着座椅子」をギリシャ語で「カテドラ」と言い、これがある教会を「カテドラ」教会という。

  教会に入る。広々とした薄暗い空間。内壁はコンクリートのまま。天井は高い。正面の祭壇に20-30mほどの高さで十字架が立つ。ほかには装飾がない、簡素なものである。しかし厳かな雰囲気が感じられた。
出席者は50-60人位。60-70歳代と見える年配の方がほとんど。
 歌で始まり、聖書の一節が朗読された後、「旅に出る時の祈り」があった。巡礼に行く人は全員、前に出てと言われると、出席者のほとんどが前に出た。「いつくしみ深い父よ、今より出かける私を祝福してください。私が思いがけない病気や事故に遭って周りの人に迷惑をかけることのないように、これから出会う全ての人々に感謝の心と、暖かい心遣いで接する事が出来ますように、助けてください。守護の天使に導き支えられ、無事に旅を終えて、全ての出会いと出来事においてあなたの愛を見いだす事が出来ますように。私たちの主イエス・キリストのお名前によりお願いいたします。アーメン」。
 信仰心のない私でも、このような場で旅の無事を祈っていただき、「無事に行ってこられる」という気持になった。
ミサの後、場所を移して集会室へ。ワインとパンをご馳走になりながら、私の隣にいた男性と談笑。54歳。学生時代に1年間欧州を歩いたが、巡礼路のあることは知らず、行かなかった、60歳の定年になったら是非行きたいとのこと。シベリア鉄度に乗って欧州に渡り、ル・ピュイからサンチャゴへ、更にフィニステラまで歩いてはという話になり、大いに盛り上がった。
 心がちょっと弾んだ1時間が過ぎ、その余韻を味わいながら、帰路に着く。

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